よく「好きなことが仕事になって良いですね!!」と言われることがあるのですが、本当にそうなのでしょうか?たしかに、ボクの小さい頃の夢は「スポーツ選手」になることで、「走り高跳び」=「好きなこと」なので間違いないではないのですが、正直なところ、毎日、笑顔でスキップしながら練習に行ったことは一度もありません(笑)。おそらく、一番楽しかった時期は競技を始めた2000年。いわゆる、ビギナーズラックで試合に出るたびに記録が出ていたので、試合が来るのが本当に待ち遠しかったですね。しかしながら、その楽しい時期も数ヶ月で終焉を迎えます。毎日のように練習をしても記録は伸びないし、ハードトレーニングをすればするほど怪我をし、何をやっていいか分からずいつの間にかスランプに陥っていました。そうなると、練習に行くのも嫌になりますし、調子が悪い時こそバーが高く見えるので恐怖心すら覚えます。
大学卒業後に夢であったアスリートとしての活動をスタートさせたのですが、それは同時に走り高跳びという競技が「部活動」から「仕事」に変わった瞬間でもありました。学生時代と違って記録や結果によって収入が変わり、どちらも出せなければスポンサーとの契約が打ち切られることもあります。もちろん、目指していた世界でありましたので、やりがいとしては十二分にありましたが、思い描いていた「楽しさ」はさらに遠ざかっていきました。
アスリートとして活動を始めてからは、皆さんでいうところの「1点」や「1勝」、「1%」、「1円」にあたる「1cm」をどうやったら生み出せるかを常に考え、それをトレーニング(仕事)に落とし込みながら試行錯誤を繰り返してきました。「2m00」の壁をクリアした瞬間はこれ以上ない喜びと嬉しさでしたが、だからと言ってその「楽しさ」は永遠に続くはずもなく、「2m01」という壁は自然とやってきてしまいます。2006年に初めて「2m00」をクリアして、「2m01」をクリアするまでに9年かかっている訳ですから「仕事が楽しい」という気持ちなんて持つことはほとんどありませんでした。
一見、楽しい世界に見えても一度、足を踏み入れたらどの世界も正直それほど変わらないと思うのです。ボクの場合は、スタートが「楽しい」から入っているので、良いイメージに見えているかもしれませんが、ジャンルや活動時間、場所などは違えど、日々、行なっていることは皆さんとさほど変わりません。結局のところ、自分に与えられた目の前の「壁」をクリアするために、一つ一つ積み重ねて行くしかないと思っています。大事なのは、「スタート」ではく、「中間地点」である現在をどのように過ごしているか。「趣味」は「趣味」で「仕事」は「仕事」という考えもありますが、ボクが19年間もこの世界で競技を続けてこれているのは「趣味」⇄「仕事」という関係性になっているからだと思っています。トレーニングでは一向にマスターできなかった助走のコーナー部分を家族と行ったスキーでマスターしたこともあれば、動物園に行った際に猿がノーアップで2m以上のジャンプをしたことを受け、それを真似てアップでジョグだけして2m00をクリアしたこともあります。正直、怪我しないかヒヤヒヤしていましたが、、、(苦笑)。
一周回って今現在は、「楽しく」競技をしていますが、競技を始めた頃のようなワクワクするような「楽しさ」ではなく、仕事として充実している「楽しさ」だと思っています。今後もどうやったら「1cm」を生み出せるかを考えながらジャンプ人生を歩んでいきます。
TORU
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